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2014年11月4日火曜日

ログインアラートはパスワード定期的変更の代替となるか

パスワードの定期的的変更には実質的にはあまり意味がないのではないかという議論(疑問)から出発した議論を続けておりますが、こちらなどで表明しているように、パスワードの定期的変更が効果をもつ場合もあります。
そこで、本稿ではパスワードの定期的変更の代替手段としてログインアラートの運用に着目し、ログインアラートの運用がパスワードの定期的変更の代替となるのか、残る課題は何かについて検討します。

パスワード定期的変更の効果まとめ

まず前提条件について説明します。ウェブサイトAの利用者xが自身のパスワード voc3at を定期的変更として変更する(voc3atはあくまで例です)場合、これが効果を発揮する条件と効果は、以下と考えられます。条件1と条件2はAND条件です。
  • 条件1: パスワード voc3at が既に漏洩していて、今後悪用される可能性がある
  • 条件2: パスワード漏洩に利用者 x は気づいておらず(あるいは気づいたにも関わらず)、パスワードを(非定期には)変更していない
  • 効果: パスワードの定期的変更後、サイトAにおける パスワード voc3at の悪用はできなくなる
条件1のパスワード voc3at が漏洩する経路については制約はありませんが、以下の様なケースが考えられます。
  • サイトAからパスワード漏洩が起こった
  • 利用者 x がパスワード voc3at を別のサイトBでも利用していて、サイトBから漏洩した
  • 利用者 x 自身がパスワード voc3at を別人に教えてしまった
  • 利用者 x がフィッシング詐欺にあってしまい、パスワード voc3at が漏洩した
条件2に関して、利用者が気づく局面の例としては以下があります。利用者が気づかない状況とは、以下のいずれにも該当しないケースです。
  • LINEのアカウント乗っ取りのように、利用者 x 自身は利用できなくなったり、友人が教えてくれる
  • 不正送金被害にあい、銀行口座から預金がなくなってしまった
  • なりすまし投稿により自身のアカウントが炎上してしまった
  • サイトAがパスワード漏洩事件を公表し、パスワード変更を呼びかけた
  • ログイン履歴を見ていて気づいた

ログインアラートとは

ログインアラート(ログイン通知とも)とは、誰か(利用者自身も含むが第三者かもしれない)がサイトにログインした際に、その旨を登録済みメールアドレスに通知する機能です。多くのサイトではログインに成功した場合に通知しますが、LINEウェブストアに関しては、ログインに失敗しても通知します。
以下は、楽天のログインアラートのメール例です。
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【楽●天】ログインアラート通知(2014/10/20 09:53)
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xxxxxxxx 様

お客様が楽天のサービスにログインしましたので、お知らせいたします。
このメールはログインアラート設定を行っているお客様に
送信させて頂いております。

◆ログイン情報
・ログイン日時 :2014/10/20 09:53
・IPアドレス   :xxx.xxx.xxx.xxx

◆ログイン履歴
https://history.id.rakuten.co.jp/
よりログイン履歴がご確認いただけます。

◆心当たりのないログインの場合
お客様以外の第三者がお客様に成りすましてログインしている可能性があります。
その場合、次のURLより会員情報管理画面にてパスワードを
変更されることをおすすめします。
https://member.id.rakuten.co.jp/rms/nid/menufwd
利用者は、ログインしていないのにこのメールを受け取った場合、別人が自分のアカウントでログインしていることを疑い、IPアドレスを確認した上で必要に応じてパスワードを変更することになります。

※注: 楽天のログインアラートメールには、このパスワード変更のURLが記載されていますが、このURLにアクセスすると楽天のログイン画面になるわけで、ログインアラートがフィッシングに悪用される懸念を考えると、メールの文面は悩ましいところではあります。

ログインアラートの効果

パスワードの定期的変更とログインアラートは、どちらもパスワードが漏洩してからの事後の緩和策と位置づけることができますが、効果については微妙に異なります。
ログインアラートの利点は以下の通りです。
  • 不正ログインの事実を確認できる
  • 不正ログインの際の日時やIPアドレス等から犯人追跡の情報が得られる
  • 不正ログインから速やかな対処が可能
  • 不必要なパスワード変更をする必要がないので利用者側の負担が少ない
  • 実装上のコストは比較的低い

一方、ログインアラートではカバーできない状況として下記があります。

  1. パスワード漏洩後、なんらかの理由で数ヶ月後に犯人が初めてログインした
  2. サイトBから漏洩したパスワードリストを犯人が購入し、漏洩から数ヶ月後にサイトAで試した。利用者はサイトAとサイトBで同じパスワードを設定していた
  3. 利用者のリテラシーが低く、ログインアラートに適切に対処できない

1.に関しては、パスワードを得て「数ヶ月放っておく」動機があるのが問題になります。
2.に関しては、あり得るシナリオではありますが、サイトAに重要情報がるのであれば、やはりパスワードの使い回しを避けるほうが安全で、その方が総合的には手間も掛からないと考えます。
3.に関しては、ログインアラートに適切に対処できない人が自発的にパスワードの定期的変更をするとは考えにくいので、パスワードの有効期限を定めて強制的に変更させないと実効性がないでしょう。ただし、私自身はパスワードの有効期限のあるサイトは、できれば使いたくないと感じます。

ログインアラートはパスワード定期的変更の代替になるか

ログインアラートについて紹介し、パスワードの定期的変更運用の代替になるか(ログインアラートを適切に運用すれば、パスワードの定期的変更をしなくてすむか)について検討しました。
前述のように、ログインアラートは完全にパスワードの定期的変更の代替にはならないものの、残るリスクは比較的軽微であり、実用上はログインアラートがあれば、パスワードの定期的変更はしなくてもよいケースが多いのではないかと考えます。
もちろん、利用者側で心配であれば、ログインアラートに加えてパスワードの定期的変更もすればよいと思います。しかし、そこまで心配するのであれば、二段階認証など、さらに強固な認証手段を提供しているサイトを選択する方が良いと考えます。二段階認証を設定していれば、パスワードの定期的変更は必要ないでしょう。
今回私が二段階認証ではなくログインアラートに着目した理由は、前述したように実装コストが低く、利用者・サイト提供者共に負担が軽いからです。このため、不正ログイン事件が多発している現状において、最低限度のセキュリティ施策として、ログインアラートの実装の検討をおすすめします。

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