プライバシーポリシー

2020年3月27日金曜日

PHP 7.2以降におけるPDO::PARAM_INTの仕様変更

サマリ

PHP 7.2以降、PDOの内部実装が変更された。動的プレースホルダ(エミュレーションOFF)にてバインド時にPDO::PARAM_INTを指定した場合、PHP 7.1までは文字列型としてバインドされていたが、PHP 7.2以降では整数型としてバインドされる。
この変更により、従来PDOが内包していた「暗黙の型変換」は解消される一方、integerへの暗黙のキャストにより、整数の最大値を超えた場合に不具合が発生する可能性がある。

この記事を読むのに必要な前提知識

この記事は、以前の記事(下記)の続編のような形になっています。

PDOのサンプルで数値をバインドする際にintにキャストしている理由

この記事では、PDOを用いたサンプルスクリプトでbindValue時にinteger型へのキャストを明示している理由を説明しています。パラメータを文字列として渡した場合、PDO::PARAM_INTにより整数型を指定しても、SQL文生成時に文字列リテラルとしてバインドされるため、「暗黙の型変換」により意図しない動作がおこり得ます。それを避けるために、値をintegerにキャストすることにより、SQL文には数値リテラルとして生成され、暗黙の型変換による不具合を避けることができます。一方、integer型へのキャストすると、整数の範囲を超えた場合にオーバーフローが起こる危険性があり、一長一短ではあります。

PHP 7.2での変更内容

PHP 7.2以降では、bindParamあるいはbindValue時にPDO::PARAM_INTを指定した場合、値はPHPのint型にキャストされます。ここで注意すべきことは、MySQLのINTではなく、PHPのinteger型にキャストされるため、32ビット環境では32ビット符号付き整数、64ビット環境では64ビット符号付き整数にキャストされ、その範囲を超えた場合はintegerの最小値あるいは最大値に変更されることです。

検証

検証のために、先のブログ記事と同じデータを用意します(再掲)。
CREATE TABLE xdecimal (id DECIMAL(20));   -- DECIMAL(20)は10進20桁の数値型
INSERT INTO xdecimal VALUES (18015376320243459);
INSERT INTO xdecimal VALUES (18015376320243460);
INSERT INTO xdecimal VALUES (18015376320243461);
PHPサンプルは下記のとおりですが、暗黙の型変換を起こすために、WHERE句で + 0を追加しています。
<?php
  $db = new PDO("mysql:host=127.0.0.1;dbname=test;charset=utf8", DBUSER, DBPASSWD);
  $ps = $db->prepare("SELECT id FROM xdecimal WHERE id = :id + 0");
  $id = '18015376320243461';
  $ps->bindValue(':id', $id, PDO::PARAM_INT); // intへのキャストはしない
  $ps->execute();
  $row = $ps->fetch();
  echo "$id->${row[0]}\n";
PHP 7.1.33で実行結果(32ビット環境、64ビット環境とも)
【実行結果】18015376320243461 -> 18015376320243459
【実行されるSQL文】SELECT id FROM xdecimal WHERE id = '18015376320243461' + 0

PHP 7.2.0での実行結果(64ビット環境)
【実行結果】18015376320243461 -> 18015376320243461
【実行されるSQL文】SELECT id FROM xdecimal WHERE id = 18015376320243461 + 0

PHP 7.2.0での実行結果(32ビット環境)
【実行結果】18015376320243461 ->
【実行されるSQL文】SELECT id FROM xdecimal WHERE id = 2147483647 + 0

端的な違いは、リテラルがシングルクォートで囲まれているか否か、すなわち、文字列リテラルか数値リテラルかです。PHP 7.2以降ではの変更、バインド時にPDO::PARAM_INTを指定した場合にバインド値が数値リテラルとして生成され、これはSQLの文法として本来の姿になったと考えます。これによる現実的なメリットは、文字列リテラルを数値に変換する際の「暗黙の型変換」が避けられ、正確な数値比較や演算が行えるようになったことです。

この変更による悪影響

PDO::PARAM_INT指定時に、値がいったんPHPのintegerにキャストされることから、integerの上下限を超えた値を指定した場合、強制的にPHP_INT_MAXまたはPHP_INT_MINに値が変更されます。具体例は、前述の「PHP 7.2.0での実行結果(32ビット環境)」を参照ください。integerの取りうる値の範囲は環境依存ですが、現在一般的な環境では以下のようになる場合が多いと思います。

32ビット環境: -2147483648 ~ 2147483647
64ビット環境: -9223372036854775808 ~ 9223372036854775807

PDOはどのように使えばよいか

今どき32ビット版のPHPを本番環境で使っている(かつPHP 7.2以降が動いている)環境はあまりないかもしれませんが、64ビット版であっても、数値の範囲について注意が必要です。PHP_INT_MAXを超える可能性がある値について、PDOはDecimal型のような型を指定する方法がないため、以下のように明示的なキャストを指定する方法などが考えられます。
$ps = $db->prepare("SELECT id FROM xdecimal WHERE id = CAST(:id AS DECIMAL(20))"); // 明示的な型変換
$ps->bindValue(':id', $id, PDO::PARAM_STR); // いったん文字列型でバインドして、CASTで明示的に型変換

まとめ

PHP 7.2におけるPDOの実装変更について紹介しました。この変更はドキュメント化されていないようで、かつ、PHP Internalsメーリングリストでも話題になっていないようです。もしドキュメント等を知っている方がおられたら教えてください。
この変更は非互換かつドキュメント化されていないものであるので、ひょっとすると手違いなどで変更された可能性もあると思っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿