とはいえ、以前、Joomla!の「ゼロデイコード実行脆弱性」はPHPの既知の脆弱性が原因で報告したように、少なくともJoomla! 3.4.5までは、MySQLの設定上 UTF-8 の4バイト文字は登録できず、それ以降の文字が全て切り詰められるという問題がありました。
このため、「admin🍣」というログイン名を登録しようとすると、🍣の切り詰めが起こって、adminユーザを二重に登録できなるのではないでしょうか?
試してみる
Joomla! 3.4.8の環境を用意して管理者ユーザーを「admin」としておきます。下記のように、default charsetはutf8となっています。この状態で、「admin🍣」を登録します。下記のように、usernameとしてadminを持つユーザーが二重に登録されていることがわかります。mysql> show create table dnbd5_users; CREATE TABLE `dnbd5_users` ( `id` int(11) NOT NULL AUTO_INCREMENT, `name` varchar(255) NOT NULL DEFAULT '', `username` varchar(150) NOT NULL DEFAULT '', ... 省略 ) ENGINE=InnoDB AUTO_INCREMENT=685 DEFAULT CHARSET=utf8
これは一種のColumn SQL Truncationといえますが、セキュリティ上の問題はないのでしょうか?mysql> SELECT id, name, username, email FROM dnbd5_users where username='admin'; +-----+------------+----------+------------------+ | id | name | username | email | +-----+------------+----------+------------------+ | 683 | Super User | admin | alice@example.jp | | 684 | bob | admin | bob@example.jp | +-----+------------+----------+------------------+ 2 rows in set (0.00 sec)
セキュリティ上の影響はないのか
上記の現象がセキュリティ上の問題となるシナリオの典型例は下記のものです。- 攻撃者がセルフサービスでadmin🍣ユーザーを登録し、結果としてadminとして登録される
- 攻撃者がユーザー=admin、パスワード=自分の登録したパスワードでログインする
- 攻撃者の権限がSuper Userのものとなる
しかし、Joomla!の場合、ここまでの悪用はできないようです。その理由は以下の通りです。
Joomla!のログイン処理のSQL文は以下の通りですが、
私がさまざまな条件でテストした範囲では、常に(先に登録された)Super Userの方がログイン処理に用いられ、後から追加したユーザー(bob)はログインチェックの対象にならないようです。SELECT id, password FROM dnbd5_users WHERE username='admin'
そして、仮にbobの方がマッチしたとしても、権限等はユニークな id で管理されているので、bobがSuer Userとしての権限を持つことはありません。
最悪の状態では、Super Userの方がログイン対象にならず、ログインできなくなるという事態は考えられますが、状況の実現には至っていません。
adminが二重に登録される理由(19:00追記)
それでは、🍣を使うとなぜadminが二重に登録できるのでしょうか。その理由は以下の様なものです。
まず、username列には一意制約がないのでデータベースの定義上は重複を許しています。
このためアプリケーション側で一意性の確認をしていますが、確認時には「admin🍣」が登録されていないことを確認しているので、そのチェックは通過します。続いて、admin🍣をインサートしますが、🍣はMySQLのutf8文字エンコーディングの列ではインサートできない(UTF-8の4バイト文字を許していないため)ので、🍣以降を切り詰めるというMySQLの恐ろしい仕様があります。このため、admin🍣がadminに化けて登録されるのです。
Joomla! 3.5以降の対応
上記は、Joomla! 3.4.8までの仕様ですが、Joomla! 3.5.0になって、データベースのデフォルトの文字エンコーディングが utf8mb4 に変更されました。これにより、Joomla! 3.5.0以降では、UTF-8の4バイト文字を悪用した攻撃は、基本的にできなくなると考えられます。アップグレードではどうなるか?
また、旧バージョンからのバージョンアップの際にも、データベースのデフォルト文字エンコーディングが utf8mb4 に変更されるようです。
下記は、Joomla! 3.4.8インストール後にJoomla! 3.6.5にアップデートした状態で admin🍣 ユーザーを登録したものですが、たしかに admin🍣 というUsernameが作られています。まとめ
Joomla! 3.4.8まででは、UTF-8の4バイト文字以降が切り詰められるという仕様を悪用して、admin🍣ユーザを登録することで、adminユーザを二重に登録できることを示しました。これによる重大な問題はなさそうですが、最悪adminユーザでログインできなくなる可能性があります。Joomla! 3.5.0では、データベースのDEFAULT CHASETが utf8mb4 に変更されたため、この問題は解消されています。
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